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生田教授からのメッセージ

【はじめに】
我々の研究室では、固体物理、あるいは物性物理という分野を中心に研究しています。 特に、固体中の電子が関係する現象、つまり電子物性をキーワードとしています。 現代は情報化社会といわれ、我々は当たり前のように便利な機器を使って生活しています。 このような、先端機器を支えているのが、それらに組み込まれた材料であり、 これらの材料が示す様々な有用な性質をたくみに利用することで、優れた機能を持つ機器が実現されます。 固体には現象として興味深く、かつ応用上有用な性質を示す物質がたくさんあります。 我々の研究室では、このような系を対象に、実験的手法を使って研究を進めています。

【基礎研究と応用研究】
我々の研究には、大きく分けて二つの側面があります。 一つは、興味深い現象があったときに、それははぜ起こるのかという原因、 つまり発現機構を明らかにする研究です。 人間ならば誰でも好奇心を持っていると思いますが、我々の研究の出発点もまさしくこの好奇心です。 なぜそんなことが起きるのか、なぜそんなことが可能なのか、というなぞ解きに挑戦する、 これこそが研究の出発点になっています。 一方、このような基礎的な研究とともに重要視しているのは応用研究です。 せっかく有用な機能が発見されても、それをうまく使いこなせないと、宝の持ち腐れです。 応用研究と言っても製品を作るわけではありませんが、 最終的に世の中で利用されるまでに越えなければならないハードルを一つでも多く越え、 将来の応用に結びつくことを目指す研究を行っています。

【研究対象】
現在、我々の研究室で研究している系は、高温超伝導体、遷移金属系を中心とした酸化物、アモルファス合金や準結晶などです。

  • (1) 酸化物高温超伝導体
    高温超伝導体は今から20年前に発見された物質群で、世紀の大発見と言われています。超伝導には、電気抵抗ゼロで電流が流れたり、磁場を試料中から排除する反磁性など、様々な面白い性質があり、既に医療用の機器などに応用されていますが、極めて低い温度でなければ起きない現象でした。しかし、高温超伝導体はそれ以前の超伝導体よりもはるかに高い温度(と言っても我々が普段生活している世界に比べると低温ですが)で、超伝導になります。これだけ高い温度で超伝導になる理由、つまり高温超伝導の発現機構は、未だに大きな謎となっています。これをなんとか明らかにしたいと思い、電子物性の測定や試料内の電子のエネルギー・運動量の分布の観測など、様々な実験的手法を用いた基礎研究を行っています。また、応用の面からも、溶融バルク体という非常に特徴的な材料を研究しています。この溶融バルク法という手法で作製した高温超伝導体は、コンパクトで非常に強力な磁石になるという特徴があり、様々に応用が可能だと考えています。また、最近では超伝導と強磁性体の接合の研究も始めました。超伝導や強磁性などある温度を境に別の状態に移ることを相転移といいますが、異なる相の接合は基礎的に非常に興味深いだけでなく、将来の新しいデバイスが生まれる可能性もあると期待しています。

  • (2) 遷移金属酸化物(強相関,低次元)
    また、遷移金属系を中心とした酸化物も研究しています。これらの物質では、系の中の電子が互いに非常に強い相互作用を及ぼし、そのために複雑な性質を示します。これは非常に難しい問題であるため、固体物理学ではこのような系を以前はあえて避けていた面があります。しかし、高温超伝導の発現機構を考える上でこの電子相関が非常に重要であることが明らかになり、電子相関が強い系の振る舞いに強い関心が集まっています。これまでいくつかの系を取り上げてきましたが、最近ではコバルト酸化物の研究を行っています。特に、磁性が複雑な振る舞いを示す1次元的な構造を有するフラストレーション系や、熱を直接電気に変換する熱電変換材料という観点からの研究を行っています。

  • (3) 非周期系物質
  • さらに、アモルファス合金や準結晶も研究しています。これらの系では、これまでの固体物理学が前提としている、並進対称性(周期性)が崩れています。一般に、結晶は原子がある規則に沿って規則的に並んでいます。しかし、たとえば液体を急激に冷却して固化すると、液体のときの不規則な状態のまま固体になります。これがアモルファス状態です。また、準結晶の場合には、原子の並びにはある規則があるのですが、その規則が変わっていて、どんなに遠くまで行っても元の状態には戻りません。(正確には6次元空間を使ってその規則性を表現します。)アモルファス状態と準結晶での原子の並び方は、通常の固体物理学が前提としている周期構造の範疇を外れています。したがって、これを反映してどのような性質が現れるのかに興味を持って研究しています。また、上で述べた熱電変換材料の可能性からの研究も行っています。

  • (4) 強磁場スパッタ法(酸化物高温超伝導体の応用)
    また、最近は強磁場スパッタ法による薄膜形成の研究も行っています。スパッタ法とは、イオン化したアルゴンなどを電場で加速して原料となる材料に衝突させ、その反動で飛び出す粒子を堆積させて薄膜を形成する手法です。様々な機能を持つ素子の多くは、材料を薄膜にすることで作製されます。その薄膜形成の重要な手法がスパッタ法です。スパッタ法では、一般に効率を上げるために磁場を利用しますが、上で述べたように、高温超伝導体の溶融バルク体はコンパクトで非常に強力な磁石になります。そこで、この磁石を組み込んで、通常の20倍もの強力な磁場を利用して高効率にスパッタが行える装置の開発を行いました。その結果、通常よりも低圧力の雰囲気で(つまり高真空で)スパッタが可能になりました。また、長距離スパッタ、低電圧スパッタ、さらには通常は困難な強磁性体のスパッタが可能、などの特徴をもつことがわかりました。これらは、作製される薄膜の性質に影響しますので、従来よりも高品位な薄膜の形成が可能になるものと期待し、研究を続けています。


【おわりに】
以上のように、我々の研究室では基礎から応用まで、様々な系を対象にした研究を行っています。 研究は、まだ分かっていないこと、まだ誰も知らないことを解明するのが目的です。 そのために、非常な困難がつきまといますが、非常にやりがいのあることです。 大学では、3年生までは講義を聴き、学期末試験に向けて勉強することで知識を習得します。 それも非常に重要ですが、どうしても受動的な勉学方法になってしまいます。 それに対して、4年生、あるいは大学院で行う研究では、学生個々人が主体的にそれぞれの課題に取り組みます。 そうすると、自分にどういう知識が欠けているのかが明白になりますし、 また最新の知識を得るために文献を読み漁ることも必要になります。 このように、研究に携わることで、それまで受動的だった勉強から、 180度方向転換して主体的に学ぶことになります。 大学で研究を行う一番の意義はここにあると思います。 つまり、実践を通して学ぶ、ということです。 我々の研究室では、卒論生(学部4年生)を名古屋大学の応用物理学コースから、 また大学院の学生は結晶材料工学専攻から受け入れています。 我々の研究に興味を持ち、一緒に研究してみたいと希望する学生さんは、大歓迎ですので、ぜひ一度、研究室の見学に来て下さい。